スペシャルインタビュー

『NARUTO -ナルト-』放送開始20周年記念!伊達勇登(監督)×朴谷直治(アニメーションプロデューサー)対談

以前、伊達さんがTwitterで「制作発表会におけるぴえろの社長の『5年は続けます。』の一言に僕は『ゲゲッ!そんなに続けるんだ~。』と正直思った。まさかその倍以上続くことになるとは、この時制作人誰ひとり思っていなかった」とツイートされていたのを拝見しました。

伊達アニメの準備をし始めた当時はこんなに長く続くとはまったく考えていませんでした。だってまだ原作は7巻ほどしかなかったし。それから原作が続いても、3年くらいかなと思っていました。

朴谷元々「アニメは長くても2年で終わる」という話だったのに、いきなり「5年は続けます」と言われて。

伊達社長がいきなり言い切ったもんだから、横にいた俺は「えー!」って言っちゃったよ。制作発表会というハレの場なのに(笑)

そしておふたりは2002年の第1話から2016年の第699話まで関わられました。

伊達原作者の岸本斉史先生とのやり取りで印象的だったのが、アニメを7、8年やったくらいのタイミングで「原作もそろそろ終わりが見えてきてますよね。あと何年くらい続きますか?」と聞いたら、「原作はあと2年くらいで終わります」と。でもそれから1、2年経って聞いても「あと2年くらいです」と(笑)。そんなやり取りが何度かありました。

制作当時を振り返ってみると長かったですか、それとも短かった?

伊達長くもあり短くもあり、という感じが強いかな。とにかくがむしゃらに走っていた気はします。

朴谷終わってみれば短かったのかもしれないけど、長期シリーズだからスタッフが離れたり増えたりするなかで、減っているタイミングはすごく苦しくて長く感じた。1日がすごく長かった。

伊達当時はそうだったね。

朴谷単純にやることが多いし、原画マンを探すのも大変だし、上がってきたものを直すの大変だし……で、とにかく作業が終わらない。特に2年目の後半から3年目が苦しかったかな?

伊達オリジナルストーリーも大変だったよね。

朴谷原画マンに「原作の話じゃないんだったらやらない」とか言われちゃうこともあったしね。

伊達原画マンもだし演出家もそう。だから彼らも魅力を感じるような面白いオリジナルストーリーを作るのが大変でした。

『NARUTO -ナルト-』はオリジナルストーリーも多いアニメでしたが、その裏でそんな努力をされていたとは。

伊達いや、当初はまだ努力というほどではなく、『NARUTO -ナルト-』の世界観を崩さないようにするのが精一杯で。後半になると少し余裕が出てきていろいろ考えることができるようになり、アシュラやインドラを出したりして。オリジナルストーリーのアイディアはあと1本あったけど、実現せずに終わったのでそれは作りたかったという思いもあります。

『疾風伝』になってからシリアス色が強まり、大人っぽい作風になったと感じましたが、そこは意識されていましたか?

伊達僕は意識して調整していました。特にオリジナルストーリーはそうです。アニメを3年も4年も続けていくと、子供に向けた話では当初からのファンが観てくれなくなってしまう。だから基本的には大人が見ても耐えられるシナリオや映像にしようと考えていました。映像に関しては原作にある話も同じで、子供が観てもスルーしちゃうけど大人になって改めて見直すと「こんな細かいことをやっていたのか」と気付くような演出を心がけていました。

朴谷『NARUTO -ナルト-』って放送期間が長いから最初の頃に見始めた子供も成長して、もうナルトの年齢を超えちゃって。しかも話も複雑でキャラクターも多いから、途中で次の小学生が入ってくるのもなかなか難しい。監督はそこを気にして大人になっても観られる映像にして当初からのファンを惹きつけ続けるという風に考えたんだよね。

伊達そういう話だと、オリジナルストーリーを続けているなかで少し人気が落ちてきたので、テコ入れをすることになったじゃない。そこで「じゃあ僕、辞めます。だって監督が変わったほうが一気に作品の世界観が変わって面白くなるんじゃないの?」って申し出たんだけど、「辞めてくれるな」と言われて。

朴谷『疾風伝』になる頃の話だね。でもほかの人を監督として連れて来るとしても、200回以上もやってるアニメのキャラクターやストーリーを1から勉強しないといけないんだからすぐにできるわけがない(笑)。だから僕も監督を変えることには反対したな。

伊達それで続投することになって、「さて、どうしよう」と考えた結果が雰囲気を大人向けに変えることで。でもいきなり極端に変えると視聴者も戸惑うだろうから、徐々に方向を修正していくことにしました。

そうして始まった『疾風伝』の話を今回伺う前にいくつか見返したのですが、思っていた以上に大人っぽかったです。特にアスマの死からのシカマルの決意とかグッときました。

朴谷あそこはよかったよね~。第302話の「第十班」は脚本に演出、絵コンテも黒津安明さんがやってくれて。

伊達将棋のシーンが衝撃的だったよね。

朴谷最初の頃から絵コンテや演出をやっていた黒津さんが途中からシナリオもやるようになって、原画に映像加工に撮影もやって、ほとんどのオープニングやエンディングも担当して。頭が下がります。

伊達彼がディレクターをした『力-Chikara-』シリーズなんて、俺は監督として名前が出てるけど何も触ってないから(笑)。申し訳ない。

『NARUTO -ナルト-』と言うと、大人っぽい演出以外にも派手な戦闘シーンも印象深いです。朴谷さんは過去のインタビューで「作画枚数を抑えるところは抑えてメリハリを作ることを心がけていた」と仰っていました。

朴谷でも枚数は使ってたよね。

伊達だって枚数のこと気にしてないもん!

朴谷いや、僕は気にしていたけど(笑)

伊達「使っちゃうものはしょうがないじゃん。あとはプロデューサーがなんとかしてよ」と思いながらやっていました。だって(アニメーターの)みんなが描きたがってたんだもん。でも何度か社長に呼ばれて怒られたよね(笑)

朴谷『NARUTO -ナルト-』は看板タイトルだからできた面もあったよね。抑えるところは抑えるけど、アクションの面白い話は社内のとっておきのスタッフを使ったり、とんでもないカット数や枚数になったりして。

伊達1話で、通常の3話分くらい作れるくらい使ったこともあったし。

朴谷でもそれが「神回」なんてネットで書かれて、視聴者に喜んでもらえているならいいのかなと。

最後に12月10日から開催されている『NARUTO -ナルト-』放送開始20周年記念展「NARUTO THE GALLERY」について伺います。注目ポイントはどこでしょうか?

朴谷いろんな映像を観られるのも楽しみだけど、僕は木ノ葉隠れの里のジオラマに期待しています。

伊達僕も。あれは純粋に見たいよね。木ノ葉隠れの里の設定資料のコピーでも持って行って見比べたいです。

朴谷間違い探しでもするの?

伊達そうそう。「あ、ここが間違えてる!」とか言って。

朴谷間違えてないから。違う部分があったらそれは監督が間違えているよ(笑)