OfficialReport
NARUTO THE LIVEオフィシャルレポート
「昔、妖狐ありけり。その狐、九つの尾あり」——。その言葉でアニメ『NARUTO-ナルト-』(以下、『NARUTO』)シリーズの放送が始まったのが2002年10月のこと。里の人間から疎まれていた主人公の少年・ナルトは戦いの中で成長し、仲間たちと共に世界を救った。物語はそんな彼の息子・ボルトを主人公とした『BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS』(以下、『BORUTO』)へ。そのアニメ『NARUTO』シリーズをオープニング、エンディング曲で、またサウンドトラックで彩ってきたアーティストたちが集結するライブイベントが9月2日、3日と2日間に渡って開催され、この20年を『NARUTO』と共に駆けてきた観客が熱い戦いを支えてきた音楽に酔いしれた。
ナルトの息子・ボルトとサスケの娘・サラダの声が響き、イベントがスタート。最初に登場したのはKANA-BOON。『NARUTO』シリーズの主題歌アーティストで新世代の代表と呼べる彼ら。『BORUTO』の最初のオープニング曲であり、物語のはじまりを高らかに謳った「バトンロード」を響かせると、会場はオレンジのペンライトに染められ、その熱はいきなりクライマックスまで上昇!続く「スパイラル」はゲーム『NARUTO-ナルト- 疾風伝 ナルティメットストーム4』のテーマソングにして螺旋丸のごときグルーヴある一曲。熱風のようなサウンドがフロアを席捲したあとには「みんなで好きなキャラクターの名前を叫ぼう!」と会場をひとつ(!?)にした谷口鮪(Vo&G)はさらに劇場版『BORUTO』のテーマソング「ダイバー」で伸びやかな歌声を聴かせ、会場のボルテージをあげ続けていく。『NARUTO』への感謝を会場一体で「ありがとー!」と叫んだKANA-BOONはその勢いのままナルトの息子・ボルトの背を押した「きらりらり」を響かせ、最後は彼らと『NARUTO』を強く結びつけた「シルエット」で大合唱を巻き起こしたのだった。
「みんな、盛り上がってるかー?」、「おまえは騒がしすぎなんだよ」と姿を表したのはイベントのMCの竹内順子と杉山紀彰。ナルトとサスケをそれぞれ演じる2人はライブの幕間にステージに登場し、ナルト、サスケとしてアーティストを紹介したり、竹内、杉山として自身が選んだ名シーンについて語り合ったりと「NARUTO THE LIVE」を盛り上げながら、終演までこの熱いライブを見守った。
2番目の登場は4人組ロックバンド・ハンブレッダーズ。アニメ『BORUTO』で2023年1月クールのエンディング「またね」のギターリフが鳴ればオーディエンスが大きく揺れ、その伸びやかなボーカルが色鮮やかに物語を蘇らせる。「僕らは『NARUTO』の超ド世代です」と話すムツムロ アキラ(Vo&G)。毎週テレビにかじりついてアニメを見ていたというエピソードに続き、初めて買ったCDも『NARUTO』の主題歌を集めたコンピレーションアルバムであり、音楽に出会ったのもまたこの作品だったと語ると、主題歌カバーメドレーを披露。Brian the Sunの「Lonely Go!」、ザ・マスミサイルの「今まで何度も」、ガガガSPの「はじめて君としゃべった」と新旧のアッパーチューンで会場を圧倒したハンブレッダーズ。最後は「全ての音楽に感謝を込めて歌います」と彼ららしさが詰まった自分達のナンバー「DAY DREAM BEAT」でステージの幕を閉じた。
各アーティストのライブのあいだでは歴代のオープニング&エンディングの振り返りの映像が流れ、懐かしい映像に自身の思い出を重ねていくオーディエンス。一曲ごとに「おお」と声があがり、オープニング&エンディング映像と共に流れる楽曲に想いを馳せるように聴き入り、時には共に歌い、曲が終わるたびに拍手を送る。それもまた20年を共に歩んできたからこその反応だっただろう。
続いてステージに姿を表したのはCHiCO。そのはじまりはlittle by littleの「悲しみをやさしさに」のカバーから。さらにNICO Touches the Wallsの「Diver」も歌い上げる。どちらも『NARUTO』シリーズでは人気の高かったナンバーなだけに会場からはどよめきにも似た反応と熱い声援があがり、彼女自身も会場を見渡しながらファンと気持ちをひとつにするように歌う姿が印象的だった。「一曲目、二曲目とみんなが大好きな、そしてわたしも大好きな曲をカバーさせていただきました」と口を開いたCHiCOへ向け、会場からは「ありがとう!」「最高!」と声があがり、緊張していたという彼女は笑顔を見せる。続けてCHiCOとしてのソロ活動第一弾シングル「光のありか」で一人のアーティストとして凛とした姿を感じさせると、「声出しOKのライブです!声、出せますか?まだ腕、あがりますか?ボルテージあげられますか?イケるのか!NARUTO THE LIVE!」とパワフルに会場を煽り、CHiCO with HoneyWorksとして『BORUTO』のオープニングを飾った「我武者羅」が鳴り出す。「オイ!オイ!」とチャントが響く会場を火の意志のような熱で席捲したCHiCOの初日のステージだった。
休憩を挟んで会場の空気を変えたのは劇伴ライブだ。アニメ『NARUTO』から劇伴制作を担当してきた高梨康治が紡いできた音楽がここ幕張メッセで演奏される。まずは劇伴のライブで盛り上がる海外公演の様子や海外ファンのコメントを映像で紹介。「僕も皆さんと一緒に会場で楽しみたかったのですが只今ドイツにライブに来ております。その代わり僕が選りすぐった刃-yaiba-第二班の演奏を楽しんでいただきたいと思います。ドイツ公演、日本公演同時進行で楽しみましょう!」という高梨のコメントに続けて登場したバンドはドラム、ギター、ベース、和太鼓、バイオリン、エアロフォン(尺八)、三味線という編成。まずは『NARUTO』を象徴する和楽器とラウドなロックで聴かせる「動天」だ。その一音目から「うぉー!」と興奮の声があがると、次々に立ち上がるオーディエンス。畳みかけるようにエッジの効いたエレクトリックな疾風ロックと三味線、尺八の音が響く「臨界」の臨場感あふれるサウンドが会場に広がっていき、続けてナルト、サスケ、サクラの三忍並び立つ場面からはじまった勇壮な「疾風伝」へ。一つひとつの音が粒子レベルで『NARUTO』の世界を表すような「NARUTOメインテーマ’16」は轟く和太鼓と威勢のいいかけ声とではじまる一曲。躍動する楽曲とスクリーンに映し出されるアニメの映像とで観客の心を物語へと誘うと、最後は過酷な戦いの中でも勝利と仲間を信じてきたナルトたちの姿がそのまま詰まったロックナンバー「形勢逆転」で幕を閉じた。演奏を終えた刃-yaiba-第二班に向けられた盛大な拍手はしばらく鳴りやまなかったほど、観客の心は熱く滾っていた。
実に『NARUTO』シリーズのライブへの出演は7年ぶりという、いきものがかりがステージへ。大きなクラップ音と大歓声に迎えられた2人。吉岡聖恵の歌いだしから始まる「ブルーバード」に歓声は歓喜の声へと変わる。2008年の『NARUTO-ナルト- 疾風伝』(以下、『NARUTO 疾風伝』)のオープニング曲は、15年を経た今もなお世界中の『NARUTO』ファンからの支持の高い一曲。幕張メッセを揺らすほど大きく揺れる観客の影。青いペンライトがフロアを彩り、同じく青い衣装を纏った吉岡。彼女がマイクを客席へ向けると「蒼い蒼いあの空」と大きな歌声が響いた。ポップでエネルギッシュな「気まぐれロマンティック」を軽やかに歌い上げたあとに「はじめましてのはずなのにすごいホーム感がある!みんな、ありがとう!」と水野良樹(G)。「ライブに呼んでいただけて嬉しいです」と吉岡も続けた。『NARUTO』を愛する人たちの空間に一緒にいられることが嬉しい、と笑顔を見せる2人は『NARUTO 疾風伝』のオープニング「ホタルノヒカリ」でフロアの熱気を加速させる。『NARUTO』シリーズと久々のタッグとなった『BORUTO』のオープニングでありボルトの成長をも感じさせたグラマラスなロックナンバー「BAKU」を響かせた。ラストはバラード「コイスルオトメ」。静かに染みわたる一曲に、いきものがかりのステージの余韻を味わうようなエンディングとなった。
最後に登場したのはアニメ『NARUTO』サウンドを牽引し続けるFLOWだ。「まだまだでっかい『NARUTO』愛、叫ぼうぜー!」とKEIGOの雄叫びから「Re:member」、「SUMMER FREAK」、そして「虹の空」をアニメの映像と共にメドレーで聴かせると、約6000人が熱を放つ広い会場はライブハウスのような、音楽と観客とが隙間なく存在する空間へと空気を変える。この日、療養中のGOT'Sに代わってベースをKANA-BOONの遠藤昌巳が務めるスペシャル編成のFLOW。その状況を「忍び連合FLOW」と名づけたとKEIGOが伝えると、大きな拍手が沸いた。「僕らFLOW、実はテレビアニメ『NARUTO』と全くの同期です。我々もデビュー20周年です!」とKEIGO。バンド人生を変えた戦友『NARUTO』への感謝の気持ちの顕れとして『NARUTO』の曲をカバーしたアルバムをリリースした彼らは、そのアルバム『FLOW THE COVER ~NARUTO縛り~』から同じくデビュー20周年となる盟友・ORANGE RANGEの「ビバ★ロック」のカバーを披露。軽快なビートと畳みかけるボーカルの掛け合いに観客も大合唱で加わった。さらに全世界で最も愛される『NARUTO』曲と言っても過言ではない「Sign」は、そのイントロから「ウォー!」と会場を震撼させる歓声が沸く。マイクを向けるKOHSHI。そこに向けて「その痛みがいつも君を守っているんだ」と歌い上げるオーディエンスとのコラボレーションは美しい光景だった。ラストはFLOWと『NARUTO』、FLOWとアニメとを結びつけた「GO!!!」だ。共にジャンプし、共に歌い、ウェーブを作り、会場がひとつとなり『NARUTO』への想いを歌い上げ、『NARUTO』愛に溢れ、塗れたライブの一日目を終えたのだった。
2日目を迎えた幕張メッセ。前日に同じくトップバッターはKANA-BOON。「バトンロード」「ダイバー」と続けて聴かせると「昨日、今日とライブをしてきたけど、“『NARUTO』と言えばあのバンドが出てないな”となった。俺たちが大好きなバンドが出てないです」と谷口。だから今日は特別に先輩の代わりにある曲を演奏します、と宣言すると会場を揺らす大きな歓声が巻き起こる。重厚に轟くベースラインから楽曲がはじまると会場に「ウォー!」と歓喜の声が!『NARUTO』二代目オープニング曲・ASIAN KUNG-FU GENERATIONの「遥か彼方」だ。アジカン meets KANA-BOONというスペシャルな時間にオーディエンスは熱狂。谷口の魂の歌声に会場が応えるように大きく腕をあげ、大合唱が巻き起こる。さらに自身の楽曲「シルエット」で『NARUTO』への想いを存分に響かせ、アニメ『NARUTO』を見て、音楽を聴いて育ってきたア-ティストの真骨頂を、まさに「NARUTO THE LIVE」で見せつけた。
1日目同様にナルトとサスケをMCに迎えて進行していくライブ。キャラクターそのままにアーティストを紹介し、まるで木ノ葉隠れの里にいるような感覚がオーディエンスに浸透していくようだ。そんな2人が竹内、杉山として思い出のシーンを語り合うコーナーでは、竹内がミナトとクシナが身を挺してナルトを守った場面を紹介すると、会場からはすすり泣く声も。杉山もサスケが生き方を変えるターニングポイントとなった場面を選び、ファンと共に名場面を振り返るなど、イベントの開演から終演までをナビゲートしていった。
KANA-BOONに続いて登場したAnly。その1曲目は「VOLTAGE」だ。『BORUTO』のエンディング曲として彼女が書き下ろした一曲はギターを掻き鳴らしてパワーを注入するように力強く響く軽快で色鮮やかなアッパーチューン。伸びやかなナンバーを歌い上げると、「みんな、『NARUTO』大好きってこと?すごーい!嬉しいー!わたしも大好きです!」と笑顔を見せたAnly 。「同じ島の先輩の、わたしの大好きな曲をカバーしたいと思います」と口を開き、「ラヴァーズ」とタイトルを告げた瞬間、会場がどよめく。7!!が歌ったアニメ『NARUTO 疾風伝』のオープニングのカバーだ。スリリングなサビメロが印象的だった一曲をAnlyが軽快に跳ねながら歌い上げると、会場のペンライトの光も躍るように揺れた。躍動感あふれる「TAKE OFF」を歌い、最後に『NARUTO 疾風伝』の最終クールのオープニング「カラノココロ」を響かせたAnly。アニメで15年続いたナルトの物語。その中で生み出された楽曲たちの、最後のクールを飾ったことでもファンにとって印象深い一曲が会場に広がっていき、歌い終わったAnlyが会場へと手をあげると、幕張メッセは温かな拍手に包まれた。
前日に続いて登場したCHiCO。little by littleの「悲しみをやさしさに」のカバーに続いたのはAkeboshiの「Wind」。静かにつま弾かれる鍵盤の音が響くと、会場から「おお…!」と声が漏れる。『NARUTO』の初代エンディングを飾った物悲しさあるノスタルジックなサウンドと英語詞で語り掛けるように優しく前向きなメッセージを届ける一曲を、柔らかな高音で聴かせたCHiCO。子供の頃に初めて触れた英語詞曲を披露できた喜びを語った彼女は、ソロ第一弾シングル「光のありか」に続けてCHiCO with HoneyWorksの「我武者羅」を熱いパフォーマンスで響かせ、その熱気で会場を一つにした。
休憩明けの劇伴ライブでは前夜同様、世界の熱気に負けない熱さでステージに刃-yaiba-第二班が登場。「アニメ『NARUTO』の音楽は主題歌だけじゃない。数々のシーンを盛り上げる和楽器とロックの力強いサウンド」とサスケが紹介するとナルトも「そんなサウンドトラックを担当しているのは作曲家・高梨康治の兄ちゃん率いる刃-yaiba-だ」と続ける。全世界で人気を博す『NARUTO』の劇伴曲。最近では高梨康治も出演する劇伴フェス開催などもあり、劇伴への熱がアニメファンに浸透中。物語を臨場感と躍動感と共にリアルに感じさせるライブは、アニメを見ていた瞬間の記憶と結びついていく。そんな音楽とアニメとの一体感を味わう時間だった。
『NARUTO』シリーズの勢いに時に加速をつけ、時に物語の余韻をファンに刻んできた主題歌が次々に映し出される幕間のオープニング&エンディング特集映像に続いて登場がアナウンスされたORANGE RANGE。「『NARUTO』が大好きなみなさん!まずは心を一つに繋げていきましょう!」とRYOの声で軽快なギターとエレクトロポップな音とが交差する。跳ねるようなHIROKIの歌声から幕を開ける「以心電信」でORANGE RANGEのライブがスタート。YAMATO、RYOの声も重なり、「NARUTO THE LIVE」のオーディエンスとORANGE RANGEとが繋がっていく。続けて9月に突入してもまだまだ隆盛のままに熱を放つ夏に送るように「イケナイ太陽」、「上海ハニー」とスマッシュヒットのサマーチューンで会場に灼熱を呼び込む。「始まってから数分、『NARUTO』とは全然関係ない曲をやっちゃっていますが、ごめんなさーい!」と曲中で告げたHIROKIだったが、沖縄で祝い事の際の即興舞踊のカチャーシーと「いやさっさ」の掛け声でテンションを一つにして、ラストは『NARUTO』のエンディング曲「ビバ★ロック」へ。大歓声に包まれる幕張メッセ。三代目のエンディング曲として2003年10月にアニメにて流れた、まさしく20年の節目となる一曲は、色あせることなくその軽妙なビートと多幸感溢れるメロディで「Oh Yeah!」と会場一体で歌い上げ、オーディエンスにとっても忘れられない瞬間をつくりあげた。
「いよいよ最後のアーティストだ。みんな、まだまだイケるよな!」とナルトの声に大歓声が応える。「フィナーレを飾るのはもちろん、全シリーズで主題歌を担当してくれているあいつらだ!」とサスケに続いて「みんな、あとは頼んだぞぉ!」とナルト。ライブの大トリを担ったのはやはりこのバンド、FLOWだ。「Re:member」から「SUMMER FREAK」、「虹の空」と繋がるメドレーで映像とシンクロした『NARUTO』ロックを聴かせ、『NARUTO』との思い出を振り返らせれば、彼らの『NARUTO』愛の結晶でもあるアルバム『FLOW THE COVER ~NARUTO縛り~』収録の井上ジョー「CLOSER」のカバーを披露。2008年の『NARUTO 疾風伝』オープニング曲である一曲を、熱いソウルを込めて歌い上げた。続いたのは世界のどの場所でプレイしても海外ファンが日本語で大合唱するという「Sign」を、『NARUTO』発祥の地・日本で会場の大きな歌声と共に奏でる。2日間に渡り、ナルトたちとの時間を、ナルトたちへの愛を確かめた「NARUTO THE LIVE」。アニメ20周年を高らかに祝う時間の、最後の一曲は今やアニメ『NARUTO』の象徴的な存在の「GO!!!」だ。オレンジ色に染まる会場で約6000人が一斉にジャンプ!その瞬間、ステージにKANA-BOONが飛び込んできて、新旧“ナルト代名詞バンド”揃い踏み!世界へ届けとばかりに歌声を響かせ、イベントは大団円となった。
完売御礼となったライブイベントは日本のみならず様々な国からもファンが集まり、『NARUTO』愛を叫んだ。出演アーティストたち、そしてオーディエンスの想いが結実したアニメ『NARUTO』の20周年記念ライブ「NARUTO THE LIVE」はこうして幕を閉じた。FLOWのKEIGOは言った。「世界中を巡って『NARUTO』の曲を歌ってきて感じました。『NARUTO』が世界一のアニメだ!」と。これからもナルト、ボルトの物語は、彼らの音楽と共に羽ばたいていくと感じさせた夜だった。
Text by:えびさわなち
Photo by:サイトウダイシ、ツボイヒロコ
セットリスト
生演奏
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